一日、二日とする内に――彼等は全く二人きりの寂しい親娘であって、生計は豊かでなく近所の交際もよくない事。娘はトヨと言う名の我儘な駄々ッ児で、妙な事にはここ二、三年来少しも家より外へ出ず、年から年中日がな一ン日ああしてあの奥の間へ通ずる障子の隙間から、まるで何者かを期待するかの様に表の往還を眺め暮している事。そうした事から、どうやら彼女は、何か気味の悪い片輪者ではあるまいかとの事。そしてその父親と言うのが、これが又無類の子煩悩で何かにつけてもトヨやトヨやと可愛がり、歳柄もなく娘が愚図り始めた時などは、さあもう傍で見る眼も気の毒な位にオドオドして、なだめたりすかしたりはては自分までポロポロと涙を流して「おおよしよし」とばかり娘の言いなり放題にしているとの事。尚又その娘のむしろヒステリカルな我儘は、最近三月、半年と段々日を経るにつれて激しくなって来たが、妙な事にはこのひと月程以前からどうした事かハタと止んで、その代りヘンに甘酢ッぱい子供の様に躁いだ声で、時々古臭い「カチューシャ」や「沈鐘」の流行唄を唄ったり、大声で嬉しそうに父親に話し掛けたりしていたとの事。ところが、それが又どうした事かこの四、五日前から、再び以前の様にヒステリカルな雰囲気に戻ったとの事――等々が、追々に明るみへ出されて来たんです。 薬剤師求人栃木県薬剤師会

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