かつてロシアの同志の、獄中で猫を抱いている写真を、何かの雑誌で見て、日本もこんなだといいがなあなぞと言って、みんなで大いにうらやましがったことがあった。ところがこの巣鴨の監獄にも、白だの黒だの斑だの三毛だのと、いろいろな猫がそこここにうろついている。写真は撮れまいけれど一所に遊ぶことくらいはできるだろうと思って、試みに小さい声で呼んで見るが、恐ろしく眼を円くして、ちょっとねめつけるくらいが関の山で、立ち止って見ようともしない。聞くにまったく野生のものばかりだそうだ。僕の徳、はたしてこれを懐かしむるに足るかどうか。ナツメ※飼猫※が大怪我をしたそうだが、その後の経過はいいかしら。  保子から、やれ胃腸が悪いの、やれ気管支が悪いの、やれどこが悪いのと、手紙のたびにいろいろなことを言って来るが、要するにいよいよ肺に来たのじゃないかと思う。医者はよく肺の初期をつかまえて、胃腸だの気管支だのと言うものだ。面会の時なぞも、勢いのないひどく苦しそうな呼吸をしているのを感ずる。できもすまいけれど、まあできるだけ養生するよう、よく兄よりお伝えを乞う。なお留守宅の万事、よろしく頼む。 自動車保険比較苛政は虎よりも猛し - .page

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