すると、 「吾々は検事じゃないんだからな」と助役が言いました。「――無暗に急るなよ。それに第一捕えるにしても、吾々は、どれだけ確固とした証拠を持っていると言うんだ。――成る程あの親爺は、確かに先夜君に追われた犯人に、九分九厘違いない。がしかし、いま捕えるよりも、もう二、三日待って今度の土曜日の真夜中に、例の場所で有無を言わさず現行犯を捕えた方がハッキリしてるじゃないか。あの親爺はまだまだ豚を盗むよ。何か深い理があるんだ。さあ、土曜日までもう一度静かな気持になって、その『最後の謎』を考えられるだけ考えてみよう」  で彼等は、素直に機関庫へ引挙げる事にしました。  そして片山助役は、翌日から彼の言明通り、あの陰気な十方舎の親娘の身辺に関して、近隣の住人やその他に依る熱心な聞き込み調査を始めたんです。

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