「あ、奥さま。お客様がお見えになりました」 「お客様? 誰なの」  せっかく楽しみのところへ、お客様の御入来は迷惑だった。なるべく追いかえすことにしたいと思った。 「お若い紳士の方ですが、お名前を伺いましたところ、奥さまに逢えばわかると仰有るのです」 「名前を伺わなければ、あたしが困りますといって伺って来なさい」 「ハア、でございますが、その方……」  といってキヨは目を円くしてみせながら、 「殿方でございますが、とってもお奥さまによく似ていらっしゃいますの。殿方と御婦人との違いがあるだけで、まるで引写しでございますわ」  妾はギクリとした。自分にそんなによく似ている男の人て誰のことだろう。妾はちょっと気懸りになった。 「じゃあ真さん、先へ入って待っててちょうだい。しかし何を見ても出て来ちゃ駄目よ」 「ははア、なんですか。じゃお先へ入っていますよ」  妾は部屋の鍵を明けると、真一を中へ押しやった。そして入口の扉を引くとそのまま廊下へ引返して、キヨの後を追った。キヨは先に立って御玄関へ出た。 エクスペディアのクーポン情報JAL 5%OFFクーポン(2012/6/30迄) エクスペディアのクーポンコード情報館