医師は鞄のなかから曲った針と長い糸とを出して、針にその糸をとおした。 それから耳のうえの頭の皮の裂け目のところに、針をプツリとたて、スーッと引張ると糸がのびて、その裂け目がピッチリ合わさった。そうして頭の皮は端からドンドン縫い合わされていった。 それが済むと、医師は屍体の横に立った。そして今度は、外にならべてあった内臓を一つ一つ空洞になった胸腔や腹腔のなかに抛りこみはじめた。その内臓の置かれる場所は、正確に、元どおりではなかった。函の中に、形のちがった大小の缶詰をつめこむときのように、ドンドン詰めこんでいった。その内臓は盛りあがって見えた。その上に、血にまみれたガーゼを二枚かけ、横に置いてあった障子のような胸骨と肋骨と一体になったものを、その上に置いた。もちろんそれは胸のところだった。 それから糸のついた針が、咽喉のところにプツリと通され、そしてドンドン下の方へ縫い合わせていった。まるでつめ襟洋服の前を合わせたような形であった。それがすむと、始めに見たと同じような少年の裸体となった。腑分けされたようには見えないほど、元の姿にかえっていた。医師はガーゼを湯につけて、それで屍体に附着している血痕をきれいに清めてやるのだった。
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