太っちょのマルタン氏が、けんめいに密林の雑草をかきわけて、早く走ろうとするその姿は、こっけいでもあったが、そのまごころを思えば、玉太郎は笑えなかった。  二人は、やけつくようなのどのかわきをがまんし、顔や手足にひっかき傷をこしらえて、密林を突破した。  椰子の木のむこうに、まぶしい海が見えてきたとき、玉太郎は気がゆるんで、ふらふらと倒れそうになった。それをマルタンがうしろからかかえてくれた。  しかしマルタン氏は声が出なかった。それで、声のかわりに玉太郎の肩をぱたぱたとたたき、彼の顔をハンカチであおいでやった。  玉太郎もやはり声が出なかったので、身ぶりでもってマルタン氏に感謝した。つっ立っている二人の脚から腹へ、腹から胸へと、赤蟻がぞろぞろとはいあがってきた。 「もう一息だ。元気を出して……」  マルタン氏が、やっと口をきいた。 「もう大丈夫。さあ行きましょう」 債権回収ほくほく債権回収株式会社 - ほくほくフィナンシャルグループ

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