「さあ、なんだろうなあ。まっ黒だから、お不動さまの生まれかわりのようだが、お不動さまなら、まさか人間を殺そうとはなさるまい。あれは黒い鬼のようなものだ」 「黒鬼か。赤鬼や青鬼の話は聞いたことがあるが、黒鬼にお目にかかったのは、今がはじめてだ。しかし、待てよ。鬼にしては、あいつは角が生えていなかったようだぞ」 「いや、生えていたよ、たしかに……」  村人たちのさわぎは、だんだん大きくなっていく。  そのうちに、ふもとの村から、特別にえらんだ警官隊がのりこんで来た。この警官たちはこわれたダムの警戒にあたるつもりで来たが、犯人が意外なる大力無双の怪物であると分かり、それから山中に出没するという報告を受けたので、「それでは」と怪物狩りの方へ、大部分の警官が動きだした。  もちろん、とてもそれだけの人数の警官ではたりそうもないので、ふもと村へ応援隊をすこしも早くよこしてくれるように申しいれた。  山狩りは、ますます大がかりになっていった。しかしかんじんの怪しい機械人間は、どこへ行ったものか、その夜の閣とともに姿を消してしまった。 

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