「おーい、おまえさんもにげなさい。命をおとしてもいいのかい」 「にげるけれど、猫がいないから探しているんだ」  混乱のうちに、めりめり音がして、庁舎がさけだした。  このとき、最後の避難者がにげだした。彼が戸口から出て、ダムの破壊箇所と反対の方向へ、二三歩走ったと思うと、庁舎は大きな音をたてて、決潰ダムの下のさかまく泥水の中へ、がらがらと落ちていった。 「ああ、助かってよかったよ。ねえ、ミイ公や」  その最後の避難者の腕に、まっ白な猫の子がだかれていた。  ものすごい決潰と、恐ろしい大濁流とに、人々はすっかりおびえきっていて、もっと早くしなくてはならないことを忘れていた。 、やっとそれに気がついた者があった。 「ああ、あそこに立っている。あいつだ。ダムをこんなにこわしたのは……」  そういったのは、例の五人の少年の中のひとりである戸山君だった。彼の指さす方角に岩山があって、その岩山に腰をかけて、こっちを見おろしている怪物があった。それこそ例の機械人間であった。