マルタンはそういって博士に呼びかけたが、博士はそれにたいして、頭を二つ三つ左右にふり、そのあとで、同じように手をふっただけであった。 ネリの方はびっくりして立ち上り、博士の手をとって立たせようとした。だが博士は、お尻に根がはえたように、その位置から動かなかった。「邪悪な慾望を持った者たちの上に、おそろしい災難が落ちかかるのは、あたり前だ。わしは彼らに同情する気がおこらない。わしは恐竜の方に味方する。あの人たちが何をいおうと、かかわりあわないがいい」 博士は、ネリにいった。 ネリは苦しげに眉をよせて、父親と、玉太郎とマルタンの両人とを見くらべたが、やがて力なくその場にしゃがんだ。 玉太郎は、ツルガ博士のたいどとことばをふかいに感じた。四人の人間の生命が失われそうなときに、博士は自分だけが正しいのだ、自分さえよければいいんだと思っているらしいのにたいし、いきどおりをおぼえた。 だが、そのことで博士をとがめているひまはなかった。そんなことよりも、早く大ぜいの救援隊員をあつめ、それから長いロープをかついで、恐竜の洞窟へ一刻も早くかけつけなくてはならないのだ。 マルタンも同じことを思っていたと見え、「玉太郎君。あの人はほうっておいて、早く海岸へ行って、他の人たちに協力をもとめようではないか。その方が早い」「ええ、それでは急いで、海岸へもどりましょう」 と、二人は密林のなかへかけこんだ。
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